エリート医師のイジワルな溺甘療法
あのマンションの部屋を買ったのも、興味のないインテリアを揃えるのも、みんな遠くに住むアメリカ人の彼女のため。
合鍵のことも、彼女が海外にいるならバレる心配は少ないから、気楽に渡せる。
私は先生のプライベートな面が見られて、“こんなところ、私だけが知ってるんだ”って、ひとりで舞い上がっていた。
先生の気持ちが自分に向いてるのかも、なんてちょっとでも期待したりして……なんだか、バカみたい……。
「あっ、でも穂乃花。そうかもしれないってだけだからね? 早合点しないで、ちゃんと確かめた方がいいよ! 私が言うのもなんだけど、言葉にして伝えるって大事なんだから!!」
「うん、ありがとう」
声を強めて言ってくれた麻友の気持ちが、痛いほど伝わってくる。婚約した彼との恋愛中、勘違いしたりすれ違ったりして、苦しいこともたくさんあった彼女の言葉だから重みがある。
自分から行動したことがなくて破局してしまった、私の過去の恋。
肉食女になるって決めたのに、受け身一辺倒のところは全然変わっていない。
けれど、まだ先生のことを本気で好きになっていない今なら、さらっと訊けるのかな。