エリート医師のイジワルな溺甘療法
これ以上好きになったらダメなのに、先生が私のためにしてくれることは特別すぎて、負けてしまうのだ。
だからもっと均衡を保つようにしなきゃダメなんだ。
きっと、受け身ばかりだから参ってしまうんだから、私も先生のために精いっぱいのことをしなくちゃいけない。
今はインテリアを選ぶことができないから、せめてもの気持ちを表そう。
でも、今の私になにができる? 先生が喜んでくれることって、なんだろう?
さんざん考えた私は、結局、平凡な案にたどり着いたのだった。
「うわ、混んでる……」
リハビリの約束をした今日は、先生のマンション近くのスーパーに来ている。
さすがタワーマンションの傍だけあって、七時をすぎているけれどカップルやサラリーマンはもちろん、親子連れも多くて、カートを押してまっすぐ歩けない感じだ。
骨折して以来、スーパーで買い物をするのはこれが初めてになる。
予想以上のことで入るのを躊躇するけれど、近くではここしか買い物できるところがない。
しかもマンションから五十メートルほどしか離れていないから、買ったあとも荷物を運ぶのが楽なのだ。
意を決して入り、松葉杖をつきながら慎重にカートを操作していく。
そんな私を、小学生くらいの男の子が珍しそうに見ているのに気がついた。