ドロップ!~別編~
異変に気付いたのはみどりがそうする
一歩手前だった。
「なぁ、飛鳥。」
「なんだよ。」
「俺、ドロップの中でどう見える?」
問いかけてきたみどりは笑顔で。
その笑みに覚えがあることにやっと気付いた。
「.....藤堂、か。」
ハァと溜め息を吐いてみどりは肩をすくめ
両手を肩らへんまで上げて首を振って
微笑した。
呆れた、というようなジェスチャー。
いつもならムカつくのに俺の目はみどりの
左手に止まった。
「...お前...」
みどりの左手には黒く光る拳銃。
「気付いてなかったらお前死んだよ。」
そんな事を言いながらやるせなさそうな顔をするみどり。
「何で、手...」
みどりの利き手は右だったはず。
みどりは笑いながらソファに座った。
その笑顔はやっぱり悲しそうで。
璃花の事を思ってるんだな、瞬時にそう
分かってしまった。
「璃花がさ、笑うんだ。少しだけど
飛鳥の話する時。」
驚いて目を見開いた。
「ほんとは、藤堂と一番親しいお前のこと
嫌いだけど、てか璃花以外好きになんて
なれないけど。でも、璃花が笑うから。」
「......だから左手にしたの、か?」
「いや?」
みどりは少しだけ笑った。
柔らかい笑み、ああ俺は今まで外側のこいつ
を見てたのかとその顔を見た時そう思った。
「ただの俺自身の手加減、かな。」
「殺すつもりじゃ...」
「殺すつもりだったよ。」
即答したみどりにまた驚く。
「無自覚なんだろうね、飛鳥のそれ。」
「どれ?」
自分の体を見渡すけれど特に変わっている事は無い。
「何それ天然?飛鳥がやっても可愛くないん
だけど」
白い目を向けられて多少たじった。
「...雰囲気だよ」
「は?」
「だから雰囲気。心開いていいよー
俺、誰でも信用するよーみたいな。」
「いやいやいやいやいや、そんなことっ」
「ウザい、うるさい、黙れ、死ね」
おい、8歳。死ねなんていうんじゃない。
「飛鳥と話すと段々、自分の考えてること
馬鹿らしく思えてくる。飛鳥の裏をかいて
やろーとか、殺してやろうとか。」
「馬鹿だなー」
「お前がな」
.........ほんとなんなのこの子。