ドロップ!~別編~
「......チッ」

え、舌打ち?

と思ったら、

「ほら、寄こせよ」

璃花に向かって伸ばされた手。

そこにいた女性陣は一瞬で真っ赤になった。

璃花の表情がぱぁっと明るくなる。

「うん!はい、どーぞ!」

両手で差し出されたものをサッと取って

食べる藤堂。

「ありがとうは!?」

「......」

「ねぇ!藤堂!ありがとう!って言うんで

しょ!」

服を引っ張ってむぅっとする璃花。

やべぇ、天使。


それでも尚

普通の(に見えるけどちょっと笑ってる)顔が

出来る藤堂に心底尊敬した。

俺なら絶対鼻血吹いて倒れる自信がある。

「うまい」

「え!?ほんと!」

あ、肉食いながら笑う美男子、神だわ。

「ああ、ありがとな」

「うんっ」

笑い合う二人。


藤堂が礼を言うなんて思わなくて俺は随分

長い間、固まった。

そして、その間に事件が起きた。

「藤堂、何飲んでるの?」

「あ?酒だよ」

「それ綺麗だね、美味しい?」

手を伸ばす璃花。
藤堂はサッとグラスを避ける。

「お前はダメ」

「なんで」

「未成年だろーが」

藤堂、

その言葉そっくりそのままお前に返すよ。

璃花と10歳違いの藤堂は当時17歳で。

藤堂も(見えないけど)一応未成年だった。

「酒はハタチからなんだよ」

「はたち?20才ってこと?」

「あぁ」

「藤堂もダメだよ!」

「俺は大人だからいいんだよ」

べっと舌を出した藤堂。

だからやめろって急に舌なんか出すなよ。

男に生まれたこと激しく後悔するから。

そんな綺麗な男に勝てない気にさせられるから。


璃花はちょっと俯いていた。

「ほら、お前も相手してこい。」

手で払う藤堂。

それが、敗因だった。

次の瞬間、璃花がバシッと藤堂の手を叩いた

と思ったら。

意表を突かれた藤堂の隙を狙い気がついたら

「っ璃花!」

璃花がグラスを持っていて。

そのまま

金色のワインを

喉に流し込んだ。
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