ドロップ!~別編~

「..っ...ぐぅッ」

相手の顔面を無表情で踏み潰し続けて

そいつの顔を見た。

「お前さ、死にたいの?殺し屋なのに」

後ろから誰か付いてきてるのは分かってた。


...悪いな、俺は人間恐怖症なんだよ

どれだけ気配を消してても嫌でも分かる。


かなり高い金で雇われた殺し屋なんだろう

身なりや肉体を見れば察しがつく。


でも、俺もさ死にたくないんだよね まだ。

やられっぱなしじゃお話にならねぇし


「殺る相手間違ったな。で?そろそろ

手ぇ離せば?ほんとに死ぬよ?お前」


なかなか根性のある奴でさっきからずっと

踏んでない方の俺の足を掴んで離さない。


「あぁ、日本語通じねぇのか」



アメリカって忘れてた。

どこでも同じ世界だけど。


「死にたいの?」

「ガァッ」

「死ーにーたーいーんーでーすーか〜?」

ぐりぐりと靴を顔面にめり込ませても

全く離す気配はない。

それどころかなんも反応しない。


...だからやなんだよな

まだ生きたいと思ってる奴って。

どうせこいつも家族のために とかやってる

だから情が出るんだよ。


俺が振り向いたあの一瞬で殴ってれば

まだ勝算はあったのに。


俺はしつこい患者と電話しながら帰ってた。

自分の医者が使えないから俺に手術をして欲しい、と。

少しでも長く生きていたいんなら向こうの
医者の方がいい。

だって殺し屋に付き纏われてるのに
分かった助けてやるよなんて言える訳ない

電話の内容が聞こえたのか何なのか

付き纏ってた殺し屋は情けが出て俺にやられてるし。

......雑魚にも程があるだろ。

「You wanna die?」

息の浅い相手に尋ねる。

「...ァァ」

あ、こいつもう死ぬわ。
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