ドロップ!~別編~
1月11日。
それは璃花と藤堂にとって特別な日。
それは毎年、そう。
あの悲劇が起こって、藤堂も璃花も
何かを見失っていた。
藤堂は璃花の命を救った。
璃花は藤堂に良心を消された。
俺があの時止めていれば。
一番そう思ってるのは藤堂じゃない。
...俺だ。
あれは璃花が来た時のような草木が青々とし
ていた時期で太陽が辺りを焼き尽くしてしま
いそうなとても暑い日だった。
『私、うさぎのおじさんのとこ行ってくる
ね〜!』
『え?藤堂には?』
『内緒〜』
しーっと人差し指を口に当てて笑う璃花は
この頃にはもうトップの方に上がってきていて。
というか、任務をやった時から他のやつと
何かが違って。
センス?根性?
そんなもんじゃない。まるで任務は璃花の為にあるような、そんな感じだった。
絶対に失敗しない鬼才の美少女。
『BLACK Rabbit』
いつしか外の人間からそう呼ばれ、恐れられる程、無邪気に美しく璃花は任務をこなしていた。
「藤堂!」
「......璃花どこだ。」
指令室にはいなかった藤堂はどうやら
仕事帰りだったらしく、ヤクザのようなスー
ツを着ていた。
藤堂が着ると大人っぽく、静かな、でも
背筋が凍るような印象を与える。
「今さっき出てったっ。」
藤堂を探し回ってた俺の息はすっかり上がってしまっていて。
「どこだ。」
静かな恐怖。
足が震えた。
「うさぎのおじさんのところって言ってたけ
ど...」
言った直後チッと苛立った風な舌打ちが
返ってきた。
「連れ戻す。」
そう言い残して藤堂は駆けて行った。
俺の目にも止まらない速さで。
きっとすぐ帰ってくるだろうな。
そう思ってた。