【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「生活指導の荒木は退学にさせるってすごい剣幕だったらしいよ」
「確かに、西野ずっと生活態度悪くて荒木先生に睨まれてたもんね」
「でも停学ですんだんだ」
「なんか加藤先生が庇ってくれて、なんとか停学でって事になったらしいよ」
「ふーん。加藤先生優しいもんねー」
ゆっくりと息を吐きながらリョウくんの席をながめていると
「寂しい?」
と、突然みゆきちゃんがあたしの顔をのぞきこんできた。
「え!?」
びっくりして顔を上げる。
「実花、西野が停学で寂しい?」
みゆきちゃんは真顔であたしに問いかける。
「あ……、。いや、隣の席が誰もいないとちょっとは寂しいよね」
慌てて笑顔を作るとみゆきちゃんは呆れたようにため息をついた。
「実花、無理して笑ってる」
「え……?」
「悲しい時は、悲しい顔すればいいのに」
突然のみゆきちゃんの言葉に、驚いてつくり笑いが崩れた。
「ど、どういう意味……?」
「別にー」
「あ! みゆきが実花を苛めてる!
あんたは無駄に言葉がきついんだから、可愛い実花を苛めちゃだめだよー」
あたしたちのやり取りに気づいた友達がからかうように声をかけた。