【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
今でもどうしようもないくらい
好きな人を見る顔だった。
好きで好きで苦しくて
どうしていいのかわからないくらい
リョウくんに惹かれてるって顔だった。
そして、リョウくんも
同じ表情で彼女の事を見てたんだよ……
彼女がどうして何も言わないまま立ち去ってしまったのかはあたしにはわからない。
なにか事情があるのかもしれない。
でも、みつめあうふたりは確かに思いあっているように見えたよ……
「きっと、後悔する……。素直に気持ちを伝えないと、リョウくんずっと後悔するから……」
リョウくんの腕にすがりついて必死にそう言うあたしに
彼は呆れたように小さく笑った。
「なんでお前が泣くんだよ」
そう言っていつの間にかあたしの頬に溢れていた涙を長い指でぬぐった。