【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
 

すると、木暮くんは吹き出すように笑いだしてぽん、とあたしの頭に手を置いた。
まるで犬でもなでるみたいに、わしゃわしゃとあたしの髪をなでながら

「なんか、上田さんって……」

そう言いかけた時、授業の開始を知らせるチャイムが鳴った。

「あ……、やべ! もうこんな時間だ!! 本気で荒木先生に怒鳴られる」

西野くんを探しに来たはずの木暮くんまで授業をさぼったら、荒木先生ものすごく激怒しそうだ。

「上田さん、じゃあ俺行くわ」

少し名残惜しそうにあたしの頭をまたポンとなでて、木暮くんは体育館に向かって走って行った。




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