【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
クリスマスと終業式のせいかいつもより浮かれた教室の中に入ると
めずらしくリョウくんが朝から学校に来ていた。
「あ、リョウくんおはよう……」
そう声をかけるとリョウくんは綺麗な唇を歪めて小さく微笑んだ。
昨日はあれから由佳さんに会えた……?
そう聞こうと口を開いた時
リョウくんの左手首に昨日まではあった茶色のシュシュがなくなっている事に気が付いた。
何もはまっていない左手首。
これは、どいう意味……?
あたしがなんて聞いていいのか戸惑っていると
「西野! ちょっといいか?」
教室の入り口から加藤先生がリョウくんを呼んだ。
加藤先生……、
リョウくんに何の用だろう……。
ドキン、と心臓が震えた。
リョウくんはめんどくさそうに立ち上がり先生の待つ廊下へと出ていく。
あたしはどうしても気になってそっとふたりの後を追った。