【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
愛してる
そう繰り返すあたしの唇を彼の冷たい手が優しく塞いだ。
「リョ……?」
ゆっくりと目を開け彼の顔を見上げると
灰色の空から一粒白い雪が音もなく舞うように落ちてきた。
その雪は
リョウくんの長いまつげにふわりと止まり溶けてその綺麗なまぶたを濡らす。
「……悪い」
リョウくんは目を伏せたままでそう言って動きを止めた。
「悪い。
その声であいつが絶対言わなかった言葉を言われると、さすがにつらい……」
いつもは冷たく強気に微笑んでいるリョウくんが
苦しげに顔を歪めゆっくりと白い息を吐いた。