【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
あたしは必死で唇を噛み
涙をこらえながら立ち上り
冷え切って震える体でリョウくんに背を向けて歩きだした。
頬が、耳が、指先が
全身が悲しいくらいに冷たかった。
悪い、なんて謝らないで
どうせあたしじゃダメなら
酷い言葉で傷つけて
乱暴に突き飛ばして
あなたを嫌いにさせてほしかった……
そんな悲しい顔で
隠しきれない弱さを見せられたら
もう、望みなんかないってわかりきってるのに
それでもあなたを愛しいと思ってしまうじゃない……