【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「キスマーク」
「は?」
唐突なあたしの言葉にリョウくんは眉をひそめた。
「ほら! 前にキスマークつけてくれたでしょ?」
いつかリョウくんがキスマークをつけてくれた左手の二の腕を指して言う。
「はじめてキスマークをつけてくれたのがリョウくんだから
あたしがはじめてキスマークつけるのもリョウくんがいいなと思って。
最後の記念に」
あたしが明るく笑いながらそう言うと
「相変わらず変な女」
リョウくんも小さく笑った。
「いいよ。どこにつけたい?」
あたしを見下ろして目を細めるリョウくんは
やっぱり悔しいくらい綺麗で魅力的だ。
「どこって……」
そう言われるとどこにつけていいのか、すごく迷う。
やっぱり腕かな……
そう思っていると
リョウくんが長い指で自分の制服のネクタイを乱暴に緩めた。
襟元から見えた綺麗な鎖骨。
思わずどきんとして目を反らす。
リョウくんはそんなあたしに構わず
片手でシャツのボタンをみっつ手慣れた仕草で外した。