【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「本当に変な女」
真っ赤になったあたしを見てリョウくんは小さく笑いながらゆっくりと近づいてきた。
道路に背を向け横にある塀に片手をつく。
逞しい体と塀の間にあたしを閉じ込めるように立って静かに見下ろした。
目の前にはリョウくんの身体。
「い、いいの?」
ドキドキしながら彼を見上げると
「どうぞ?」
緊張するあたしを面白がるような顔でクスリと笑った。
緊張で小さく震える手を彼の首に伸ばす。
背伸びをしてリョウくんの綺麗な鎖骨の上にそっと唇をつける。
「そんなんじゃ跡つかねーよ」
不器用なあたしにリョウくんが呆れたように笑った。
「え?もっと?」
「もっと強く」
緊張で呼吸さえ苦しいあたしを平然と見下ろして小さく笑う。
ドキドキしすぎて
心臓が、おかしくなりそう。
「い、痛くない?」
不安で涙目になりながら彼を見上げると
「痛くねーよ」
彼の大きな手がグッとあたしの後頭部を引き寄せた。