【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
 

まるで抱きしめられてるような感覚に眩暈がした。

いつまでもこのままでいたい……

そう思いながらもゆっくりと彼の肌の上から唇を離すと
そこには不格好な赤い印ができていた。


あたしがリョウくんにつけたキスマーク。


「あは、変な形……」

妙に細長い不格好な形にそっと指で触れた。

「満足した?」

静かにあたしを見下ろして笑うリョウくんの首筋にはあたしが生まれて初めて付けたキスマーク。
その不格好さが不器用なあたしらしいと思った。


「ありがとう、満足した」

あたしが笑顔でそう言うとリョウくんも小さく笑いシャツのボタンを閉める。


「リョウくん、
あたしずっとリョウくんの事が好きだった」

あたしがそう言うのをリョウくんは静かに聞いていた。

「はじめて人を好きになったの」

3月の風はまだ冷たくてリョウくんへの告白の言葉とあたしの息が白く空に上った。

「はじめて好きになった相手が俺なんて、相当趣味悪いな」

リョウくんはあたしの言葉に呆れたように肩を上げる。
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