【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
 

「あ!もしかして、リョウ!?」


木暮くんは大きな声で躊躇いもなくその名前を呼ぶ。
その声にゆっくりと振り返り微かに首を斜めに傾げて目を細める綺麗な顔。



…………リョウくんだ


3年ぶりに見る彼。

記憶の中より大人びてさらに魅力的になった彼が
わたしたち二人を見て穏やかに微笑んだ。

「リョウくん……」

彼のこんなに優しい表情を見るのははじめてで
いつか保健室でキスされた時よりも
屋上で抱き合った時よりも
ずっとずっとドキドキした。

「リョウ偶然! また会ったなー」

そう言って親しげにリョウくんの肩を叩く木暮くんが
リョウくんの隣にいる女の人に気づいて眉を上げた。

「あれ? リョウの彼女?」

驚いたようにリョウくんに確認すると肯定するように小さく笑った。
わたしもつられて彼女を見る。

セミロングの髪を茶色のシュシュで縛った柔らかな雰囲気の綺麗な人。

木暮くんとわたしに向かって
ふわりと微笑んで小さく会釈した。


「あ……」
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