【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
由佳さんだ……
地下鉄の向かいのホームで今にも泣きだしそうな顔でリョウくんを見つめていた人
その人が今
あの茶色のシュシュで髪をまとめリョウくんの隣で微笑んでる……
わたしはなぜかわからないけど
胸がいっぱいになった。
胸に熱いものがこみ上げて思わず涙が出そうになった。
「なんだよー! 俺に別に女にモテないとか振られてばっかだとか言いながら
こんな美人な彼女いたんじゃねーか!」
木暮くんは怒ったようにリョウくんの胸を叩いた。
そのやり取りを不思議そうに見ていた由佳さんにリョウくんが
「高校の時同じクラスだったんだ」
と木暮くんの攻撃を苦笑いでかわしながら言った。
「あ、そうなんだ……」
納得したように頷いてこっちを見た由佳さんに
緊張でドキドキしながら口を開いた。
「こ、こんにちは!」
上擦った声でそう言ったあたしに
「こんにちは」
由佳さんは優しく微笑んでくれる。
わたしは彼女に何を言っていいのかわからなくて気付いたら勝手に言葉が口から出ていた。
「あ、あの!
リョウくんはわたしの初めての人なんです!」