【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「本当に? いつにする? 年末と年始どっちがいい!?」
「そうだ、お正月にみゆきちゃんがこっち帰って来るって言ってたから
どうせならみんなで集まろうか」
「へ?」
「ちょうどみゆきちゃんも彼氏と別れたばっかりだって言ってたんだ。
みんなで集まった方が楽しいもんね」
みんなで集まってお互いの失恋の話でもして楽しく飲めたらいいな。
そう話すわたしに
「…………まぁ、いっか」
木暮くんは大きくため息をついてから昔とかわらない人のいい笑顔で笑った。
顔をあげてリョウくんと由佳さんが歩いて行った方を眺めてみたけど
街の雑踏にまぎれてもうふたりの姿は見えなかった。
彼が今幸せなら
あの頃のわたしの叶う事の無かった初恋も報われるような気がして
どうか
ふたりがこの先もずっと幸せでありますように
わたしは心の中でこっそりと祈った。
バイバイ
わたしの、ハジメテノヒト。