【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「女の子の飲みかけのコーヒーを勝手に奪うなんて、本当に無神経な男だね」
なんて苦笑する先生にあたしは慌てて首を振って気にしてないフリをしたけど、きっとバカみたいに真っ赤な顔をしてる。
西野くんはそんなあたしをちらりと見て、少しだけ目を細めた。
はじめて正面から見たその真っ黒の瞳は、驚くほど綺麗で、ドキドキした。
あたしは自分の動揺を誤魔化すために、先生が新しいカップに淹れ直してくれたまだ熱いコーヒーを、無理してガブガブと飲む。
西野くんの視線が気になって、ずっとドキドキが治まらなかった。