【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「最近西野くんキスマークつけてないんだよね」
お昼休み
あたしがポツリと言うと、みゆきちゃんが思いっきり眉をひそめた。
「はい?」
「だから西野くん、彼女と別れたのかなぁと思って……」
別になんの他意もなく思ったことを言っただけなのに
「言ったじゃん実花、あいつと関わらない方がいいってば!」
と、おもいきり睨まれた。
「別に、不思議に思っただけだよ?」
関わるどころか保健室で偶然話して以来一言もしゃべってないし、
西野くんはいつも寝てばかりであたしになんか興味も示さないのに。
頬をふくらませたあたしをよそに、みゆきちゃんたちが話し始める。
「大体さぁ、あんなガッツリ見える場所にキスマーク付けないよね。普通」
「自分の存在主張したいって女の魂胆見え見えだよね」
「よっぽど独占欲の強い女だったんじゃない?」
「独占欲ってか、すっごい執念深そう~。ちょっと異常っぽいよね。それなら別れて正解だよね」
「でもさぁ、あんな男だから浮気されるかもとか疑って、ムキになってキスマークつけてたんじゃない?」
「あぁ、ありえる! 彼女いるのに平気で他の女に手を出すって噂だもんね」
キスマークひとつで、相手の女の子の性格までどんどん推測するみんなに驚いて、ほぅー、と息を吐いた。