【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「すごいね。やっぱりみんな西野くんに興味あるんだね」
気になってたのはあたしだけじゃないんだね、と笑顔でみんなに言うと
「はぁ?」
すごい形相で睨まれた。
「あんな最低な男になんか興味あるわけないじゃん」
みゆきちゃんはきっぱりと大きな声で吐き捨てる。
「……西野くんは最低な男なのかなぁ」
確かに、
優しそうでもいい人そうでもないけど
冷たそうだけど
意地悪そうだけど
だけど……。
なんだろう、すごく心の中がもやもやする。
言いたいことはあるのにうまく言葉にできなくて、顔を机につっぷして
「うーーーーーっ」
と唸った。
「西野なんて最低な男に決まってるじゃん! 実花にも教えたじゃん。あいつの噂……」
みゆきちゃんがそうあたしに向かって早口でまくし立てていると
ふ、と
黒い影が横切った。
「………?」
なんだろう、と思い見上げると、驚くほど至近距離に西野くんの顔があった。
「へぇ……、俺の噂?」
あたしの背後から覆いかぶさるようにして、正面に座るみゆきちゃんを見下ろしていた。
「………っ!!」
まさか西野くんが教室にいると思わなかったのか、目を見開いたみゆきちゃんの顔がみるみる赤くなっていく。