【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
 

ちょっ、ちょっと待って!

ソファーに押し倒されて優しく髪をなでられるあたしと、そのうえに覆いかぶさる上半身裸のリョウくん。

この状況、どう考えてもおかしいよ。

「まって、リョウくん! ちょっと離して! 彼女さん勘違いしちゃうって!!!」

逞しい身体の下でもがくようにバタバタと手足を動かすと、慌てるあたしの事も怒る彼女の事も面白がるように、リョウくんは声をださずに笑った。

「ふざけないでよっ!!」

彼女はその華奢な細い手足でソファーに押し倒されたあたしにつかみかかろうとした。
思わずぎゅっと目をつぶると

「落ち着けよ」

その手があたしに届く前に、リョウくんが彼女を押さえつけるように両手と掴んでいた。

「やっぱり、他に女がいたのね! ずっとあたしを騙してたのねっ!!」

リョウくんの腕の中で、華奢な体には似つかわしくないほど大きな声で彼女が叫ぶ。


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