【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
みんなの徹底的な質問攻めに疲れ切ってぐったりしていると、2時間目の始まる直前にリョウくんがいつものように平然と教室に入って来た。
「あ、リョウくん……」
傘、ありがとう。
あれから彼女と仲直りできた?
なんて、言いたいことはいっぱいあったのに、声をかけようとした途端授業を知らせるチャイムの音と加藤先生の声が響いた。
「ほら、授業はじめるぞー」
教室に入って来た先生は丁度席についたばかりのリョウくんをみつけて呆れ気味のため息をつく。
「西野、たまには遅刻しないで朝のホームルームから出席しろよ」
「はいはい」
リョウくんはそんなのどうでもいいように軽く受け流す。
そんなリョウくんを横目でこっそり観察しながら教科書を開いていると
「センセー、昨日彼女とデートしてたって本当?」
クラスの男の子がふざけるような口調で先生に向かって言った。