【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「なんだよそれ」
突然の質問に一瞬目を見開いてから苦笑いする先生。
「実花が言ってたよ。女の人とふたりで地下鉄乗ってたって」
うわー。
それじゃあ、あたしがみんなに言いふらしたみたいじゃない!
いや、実際あたしが喋ったんだけど……。
先生と目があって、あたしは慌てて頭を下げた。
「見られてたのか。なんだ、声をかけてくれればよかったのに」
困った顔のあたしを見て先生は優しく笑った。
「彼女と付き合ってどれくらい?」
「結婚しないのー?」
「結婚はそのうちしたいと思ってるんだけどなー」
面白がって次々に質問するみんなに、先生は怒ることなく笑顔で答える。
その表情で、よっぽど彼女が好きなんだなぁなんて感じてうらやましくなった。
「彼女美人なんでしょ?」
「芸能人ならだれに似てるー?」
どんどんエスカレートする質問に先生は笑いながらあたしを見た。
「そうだなぁ。上田に少し似てるかも」