【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
え? どういう意味?
「みんながリョウを悪く言うから、誰かにリョウはいい奴だって言ってほしかったんだろ? もし俺がやめとけって言ったって、好きでいるのをやめられるワケないのに」
木暮くんは人の心を分析するみたいに冷静に静かにあたしに向かって言った。
……確かに、そうかもしれない。
ただ、ひとりでもいいからあたしの気持ちをわかってくれて背中を押してもらいたかっただけかもしれない。
そう思うと、木暮くんに投げかけた質問が恥ずかしくて顔が熱くなった。
「まぁ、人がよくて優しい俺は、上田さんの期待に応えてしっかり背中を押すんだけどさ」
恥ずかしくて顔を上げられないあたしに木暮くんは優しく言った。
「最近、リョウ少し変わったよな」
あたしがなんとなく思ってたことを、木暮くんも感じてたことに驚いて顔を上げた。
「リョウ最近いつもさ、上田さんの事みてるよね」
「え……?」
リョウくんが、あたしを見てる?
びっくりして目を丸くすると
「あ、気づいてなかった?」
驚いたあたしを見て木暮くんが小さく笑った。