【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
 
「特に上田さんが喋ってる時。授業中とかさ、いつもなら寝てばっかりいるのに、気付いたら起きてて教科書読んでる上田さんの声とか優しい顔で聞いてる」
「…………」

嘘……。
そんなのぜんぜん気づかなかった。

あたしになんて何の興味もない冷たい表情のリョウくんが、あたしの声を優しい顔で聞いてるなんて。

木暮くんにそう言われただけで体中が熱くなった。

そんなあたしの顔を見て「ほんとに俺も人がいいよなぁ」なんて木暮くんが苦笑する。

「どうして、リョウくんがあたしの声なんて……」

ドキドキが止まらなくて両手で頬を押さえたら、おどろくほど顔が熱かった。

「そんなの俺が知るわけないじゃん。リョウに直接聞いてみたら?」

リョウくんに直接……?
そんなの聞くの恥ずかしいよ。

「別に普通にきけばいいじゃん。俺にキスマークの付け方聞くよりずっと恥ずかしくないと思うけど」

私がうつむいて黙り込んでいると、木暮くんがからかうように笑った。

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