【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
あたしは、盛り上がるみんなの声を聴きながら、授業中いつも隣の席で眠る西野くんの姿を思い浮かべる。
すこし意地悪そうででも綺麗な唇と、男らしい顎のライン。
色っぽい首筋、制服の白いシャツから時々のぞく鎖骨。
その綺麗な肌の上に見え隠れする、やけに艶やかな
―――赤い印。
「……あっ! あれがキスマークなんだ! 知らなかった。いつも、不思議なところに怪我をしてるなって思ってたんだよね」
みゆきちゃんの言葉の意味を理解してスッキリして大きな声でそう言うと
一瞬、教室の中が静まり返った。
あれ?
なんでこんなに教室中が静かになったの?
びっくりしてあたりを見回すと、みゆきちゃんが肩を震わせながらあたしに抱きついてきた。
「実花ー!!!! キスマークを知らなかったって、あんたどれだけ純情なの!?」
「ほんとに、実花かわいすぎる! 高校三年にもなってそのピュアさは奇跡だよ!!」
「え、もしかして今までだれとも付き合ったことないとか?」
「ってか、初恋とかしたことある?」
次々にあたしをからかいはじめるみんなに、あたしは真っ赤になって耳をふさいだ。