【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
 

屋上へと続く非常階段を上る。
いつもは使用禁止になっているその階段はひと気がなく足音がやけに響く。

立ち入り禁止の屋上には簡単な鍵がかかっていたけど、誰かに壊されたのかその華奢な金属はもう鍵の役目をを果たしてなかった。


リョウくん、いるかな……?


緊張しながら屋上の扉を開けのぞくと、コンクリートの床に腰を下ろし鉄製の柵によりかかって眠るリョウくんの姿があった。



……あ、いた。


木暮くんにもらったココアを握りしめ彼に近づくと、あたしの足音がうるさかったのかリョウくんは眉をひそめうっすらと目を開けてこちらを見上げた。

背の高いリョウくんをこうやって見下ろすのは初めてかも。
あたしの心臓はそれだけでドキドキとうるさくなる。

寝起きで不機嫌そうに顔にかかる黒いかみをかきあげ、あたしを見上げて目をほそめた。

「なんか用?」

寝起きの掠れた声がものすごく色っぽい。

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