【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
 
「じゃあ、なにがいい? 口止め料」

呆れたようにため息をつきながらリョウくんがあたしを見る。

「リョウくん、教えてくれる?」
「何を?」

一生懸命笑顔をつくりながら木暮くんに言われたことを思い出していた。


『なんか、上田さんずるいから――

もし俺がやめとけって言ったって
好きでいるのをやめられるワケないのに』



……本当だ。

誰に止められたって、リョウくんがあたしの事なんて好きじゃなくたって
他に大切な人がいて、あたしに少しも希望がないってわかったって

好きでいることをやめられるワケないんだ。

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