【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「キスマークってどうやってつけるか教えて?」
笑顔でそう言ったあたしにリョウくんは軽く首を斜めに傾げ綺麗な眉をひそめた。
「ほら、リョウくん、前はいつも首にキスマークつけてたでしょ? あたしいっつもそれ見てキスマークってどうやってつけるか気になってたんだよね」
「……俺にキスマークつけてほしいって意味?」
リョウくんは静かにそう言ってあたしの顔を見る。
リョウくんの綺麗な黒い瞳にまっすぐにみつめられて、無理して作っていた笑顔が簡単に崩れた。
「うん……」
うつむいて小さな声でそう言うと
「変なヤツ」
リョウくんが呆れたように笑った。
変なヤツだって思われていい
バカな女だって思われていい
少しでいいからリョウくんにあたしに触れて欲しかった。
「どこがいい?」
「え?」
「キスマーク、どこにつけてほしい?」
あたしがよしかかっていた鉄柵に手をついてリョウくんが静かに聞いた。
顔を上げるとあたしを見下ろす意地悪な微笑。
あたしの視界は全部リョウくんに奪われた。