【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「ど、どこって……」
そんな事言われても……
動揺と緊張で声が微かに震えていた。
そのあたしの声を聞いてくすりと笑う綺麗で残酷な唇。
この震えた声も、リョウくんの好きな人に似てるのかな。
なんて思ってしまうあたしは我ながら酷く自虐的だ。
ぎしり、
リョウくんが腕に体重をかけたのか背後の鉄柵が小さく音をたてた。
鉄柵と逞しい体の間にあたしを閉じ込めて余裕の表情で微笑むワルイオトコ。
焦らすようにいたぶるようにわざとゆっくりと近づくリョウくんの唇。
傾けた顔があたしの首筋のすぐそばまできていた。
頬に触れるリョウくんの柔らかい黒い髪の感触に
首筋に感じる温かい吐息に
眩暈がした。
いっそこのまま首筋に噛みついて
あたしの息の根をとめてくれたらいいのに
なんてバカな事を思った。
緊張で微かに震えるあたしの身体にリョウくんはクスリと笑うと、強張った首筋にフッと息を吹きかけた。