【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
 
ゆっくりとその綺麗な唇が肌から離れ、リョウくんがあたしを見て静かに言った。

「これで満足した?」

あたしの白い二の腕の内側には微かに濡れて光る鮮やかな赤い印。

「あ、うん……」

熱に浮かされたようにぼうっとしたままなんとか頷くと、リョウくんはあたしの腕から手を離し立ち上がった。

「じゃあ」

そう素っ気なく言って背を向けて歩いていく。


あたしは背の高いリョウくんの後姿を見ながら、二の腕につけられた赤い印をそっとなぞった。


どうしよう……

身体中の血が沸騰しそうに熱い。
今にも燃えだしそうな血液が身体中をすごい勢いで流れてあたしの頭を狂わせる。

どうしよう……

肌の上にリョウくんの唇の感触が甦る。

その暖かさが愛おしくてあたしは自分の左腕を抱きしめた。

どうしよう……

リョウくんが好きで好きで仕方ない。

他に好きな人がいるってわかってるのに。
あたしには望みなんてないってわかってるのに。

もっともっと
リョウくんを知りたくて仕方ない。

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