【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
「上田、暗くなる前に帰れよ」
そう言って教室を出ていく先生を見送りながら
リョウくんはどこにいったんだろうと不思議に思った。
どこかで寝てるのかな……?
寝てるとしたら、保健室かな。
なんて期待を抱きながらあたしは自分のカバンを持って立ち上がる。
ドキドキしながら向かった保健室の入口には不在の札がかかっていた。
誰も、いないのかな?
と思いつつゆっくりとドアを開くとガランとした静かな室内。
一番奥のベッドだけに白いカーテンが引かれてるのに気付いて、あたしは足音を立てないようにそっと近づいた。
ゆっくりと白いカーテンの隙間からのぞくと、そこに寝てたのは
眠る姿までくやしいくらい魅力的なワルイオトコ。
彼の姿を見るだけであたしの心臓はきゅっと小さく悲鳴をあげる。
乱れた黒い髪の間から伏せた長い睫毛が見えた。
ドキドキしながら彼を見下ろして
「リョウくん……」
小さく彼の名前を呼んでみた。