【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
 

「……ん」

あたしの声に反応したのか薄く開いた唇から小さく吐息が漏れた。
眉をよせてまだ眠そうに寝返りをうつ姿がなんだか可愛い。

「リョウくん、寝すぎだよ」

彼の耳元に近づいてそっと囁くと

「ん……、由佳?」

目をつぶったままリョウくんが掠れた声で
誰か知らない女の人の名前を呼んだ。


由佳……

無意識のうちに口にしてしまうほどその人の事を考えているの?


切なさに耐えきれず彼に背を向けて保健室を出て行こうとした時
ベッドの中から伸びてきた手に左腕を掴まれた。


「キャ……!!」

突然の出来事に小さな悲鳴をあげてぎゅっと目をつぶると、いつの間にかベッドの上に押し倒されていた。

「えっリョウく……」

驚いて目を見開くと、リョウくんがあたしを組み敷くように押さえつけていた。


ええ!?
なんでこんな事に……!?


動転して、抵抗するのも忘れて呆然と彼の事を見上げていると
その綺麗な唇があたしの首筋に噛みつくようなキスをした。


「んんんっ……!!」
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