【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
昼休み
みんなで机をあわせて食べるお昼ごはん。
あたしがのんびりとパンをかじっていると
みんな早々にお弁当箱を片づけて単語カードなんかを出し始めた。
入試本番まであと約1か月
もうすっかり真剣ムードだなぁ
なんて思いながらあたしはぼんやりと眺めていた。
「あー、もう受験したくない!!」
みゆきちゃんのうんざりしたような叫び声。
「大変だねぇ」
ココアを飲みながら相槌をうつと
「そっか、実花は専門学校もう決まってるんだもんね」
みゆきちゃんは頬杖をつきながらあたしの事を見た。
「いいなぁ~。冬休み勉強しなくていいなんて! うらやましすぎるっ」
なんて言うみんなに、あたしはえへへ、と首を傾げて笑って見せた。
「もうすっかり受験本番ムードだよね。みんなすごいなぁ」
以前より少しピリピリしたムードの教室を見回してあたしが言うと
「うちのクラスはそうでもないよねー。あいつのせいで」
と、みゆきちゃんがあたしの隣の席
今は無人のリョウくんの席を見て言った。