☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3
「……」
何もものを言わない、沙耶。
そんな彼女を助手席に押し込み、俺は運転席に座る。
アクセルを踏めば、発進する車。
「……」
どのくらい、沈黙が流れただろうか。
ふと、沙耶が呟く。
「……あんた、会議は」
疑問符すら、使わない。
「……終わらせてきた。速攻で」
「……そんなんで良いわけ?」
「内容は充実している」
「……そう」
また、沈黙。
思い出すのは、よりによってあの記憶。
(仕方ねぇ……)
せっかく走り出したけど、どうせ停まるなら、家の中の方がいい。
道路で停まるほど、迷惑なことはないからな。
無言で、窓の外を眺め続ける沙耶。
自分の家のことを言うのもなんだが、うちはお金持ちであるがゆえ、金を使うところがないので、庭にえらく金をかけてある。
因みに、色々な施設や団体に多額の寄付をした上での余った金だから、余計に、だ。
金のかけられた庭は、さながら、違う世界のようで、季節季節で違う花を楽しむことができ、今は秋だから、庭に流れる川には散った紅葉が漂っている。
初めて来たときに感激していた沙耶は、今でも庭を気に入っているらしく、時々、なんの意味もなく、こうやって庭を見つめているのだが。