☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3


(今、見なくても良いだろ……)


心底、そう思う。


ってか、沙耶の言っていた台詞だ。


家出先の姫宮家でも、さっきも、俺の気持ちがわからないって……どれだけの恥を忍んで、あんなことを言ったと思ってる……。


思い出すだけで、こんなにも恥ずかしい一年半前の記憶。


沙耶を攻める方が得意な俺は、沙耶になんて言えば、気持ちが伝わるとか判らない。


(だから……今だって)


俺は、車を止めた。


もう少しで、公共道路に出るというところで。


沙耶はそれに驚いたのか、俺の方を見てくるが、俺はエンジンを消し、戸惑う沙耶をおいて、車から降りた。


「ちょっ……相馬!」


ぶっちゃけ、俺は怒っているんだと思う。


沙耶の不満に気づけなかった自分に、


言ってくれなかった、沙耶に。


(怒る資格がねぇのは、判ってるけどな……)


沙耶側の扉に回り、開けると、沙耶が俺の胸ぐらを掴んできて。


「何で、止めたの?」


不思議そうに、訊ねてくる。


(嗚呼、ダメだな……)


わかっている。


沙耶が求めているのは、動作ではないってこと。


それでも、今、この瞬間、俺は沙耶に触れたくて仕方がない。


でも、触れることは御園に引きずり込むことになるからと、我慢していた。


つまり、溜まってる。


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