☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



もう、あの時のように、諦めない。


両手で、顔を覆ったあの日のように。


響いた、少年の悲鳴。


閉じ込めた、あの日の記憶。


「っ……相馬、これ……」


沙耶に手首を掴まれ、俺は笑った。


苦い、逃げようとした俺の証。


「これ、いつ……」


「母さんを失ったとき」


無数に傷つけた、自分の手首。


「こうすれば死ぬことができるって、書いてあったんだよ。でも、死ねなかった。逃げられなかった。闇からは」


ただ、絶望していたあの頃。


まるで、陽の光が差し込むように、俺は陽向伯父さんに救われた。


あの時はただ、何もかもがどうでも良くて。


何も、要らなかった。


生きること自体、どうでも良かった。


何も望んでいなかった。


そう、沙耶に出逢うまでは。


求められるままに、応じてきた人生。


初めて、人を救いたい、愛したい、傍にいて欲しいと、色んな感情が沸き起こり、人になれた気がした。


「相馬……」


「でも、もう、平気なんだ。お前がいてくれるから」


「っ……」


「だから、俺から離れないでくれ」


「で、でも……っ、ぁ……」


「まぁ、お願いしていても、お前の返事は聞かないけどな」


今さら、聞いても無駄だから。


こいつが何を答えるのか、大体、想像できるし。

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