☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3
「襲うとかは、出来ないけれど……私も、愛してるって言い続けるよ。それなら、出来るし」
何だって、やってやろうと思ってしまうから。
不安も怖さも溶かしてくれる、この人の愛は。
「……本当、珍しいな。お前がそんなことを言うなんて。熱でもあるのか?」
「失礼な。反省したんだよ?……一応」
「反省って、家出か?誘拐か?それとも、離婚か?」
「…………全部(一応)」
ゆっくりと、私を侵してく。
恋なんて知らなかった。
人を愛すつもりなんて、なかった。
結婚するつもりだって、なかった。なのに。
「おい、一応って、なんだ!」
「うわーん!だって、一応なのは、一応だもん!それに誘拐されたのは、私じゃなくて柚香!」
私はこの人と契約したことで、囚われて。
手が、唇が、何もかもが、私に熱を刻み、覚えさせた。
「屁理屈か!」
「こっちの台詞だ!馬鹿!」
喧嘩して、泣いて、でも、また、笑いあって。
「…………良いな、これ」
少しずつ、お互いを知っていく。
「お前とは下らない喧嘩して、話をして、笑い合うのが一番かもしれん」
死ぬまで、お互いを知り合って……愛し合って、そのすえに。
「変かもしれないが、それが一番、俺は楽しい」
この人を愛したんだと、言いながら、想いながら、逝けるなら。
「……そうかも」
それが恐らく、真実の愛。
「こんな風に、一緒に過ごす時間を大切にしていこうな」
少しでも長く、彼の愛を受け止めて。
彼の愛に、侵されて。
彼を少しでも長く、知っていく。
そうすれば。
「はい」
死ぬときに、私たちの愛は――この愛は、“真実”となるだろうから。
「愛してる、沙耶」
「ん。私も……愛してる」
この人の重い愛を受け止め続ける永遠は、
始まったばかり。
―完―