☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3
「スポーツ特待で、蒼繚華に入ったのは良いけど……勉強のスピードが早くて。おまけに、成績さえよければ、蒼繚華は授業をでなくて良いの。それを口実にさ、人をつれ回して……」
「……まず、自己紹介ぐらいしようよ。それに、あの時、奏も喜んでたよね?『授業、サボれた!』って」
「……」
スポーツ特待。
それで、入学もすごい。
「でも、夏渡もそうよ?」
ふと、対抗心を燃やしたように、真耶さんが言った。
「夏渡は、蒼繚華で奨学生で、おまけに部活動で活躍してたんだから」
……………やっぱり、雲上人はすごすぎる。
考えていることも、何もかも。
「ねぇねぇ」
肩をトントン、と、され、顔をあげると。
「私、長谷部……じゃなかった。御園葵。冬馬の妻です。初めまして、伊織ちゃん」
優しげな笑顔。
「私、卒業が蒼繚華なの。行く気があるなら、何でも聞いてね?」
親切で……美人。
本当、人としての最高峰にいる彼らは、全員、仲良くて。
「奏、わかる?あれが、普通の初対面の接し方だよ」
「だぁー!!うっさいな!」
「……うるさいのは、あんた」
「あ!?なんか言ったか!冬馬!!」
「まぁまぁまぁまぁ」
こんな人たちが集まる家。
その上に立つのは、沙耶さんたちで。
恐らく、楽しい家なんだろうなと思った。
―まるで、死んでしまった伊織の家族の集まる家のように。