☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



家の敷地内にある稽古場である、この場所―鬼舞殿(きぶでん)は、父の配慮により、冷暖房完備の所だ。


けれど、自分の鍛練のために私は暖房をつけていない。


だから、鬼舞殿の中は冷えきっている。


吐き出す息は白いが、額には汗が伝い。


―御園茅耶(みその かや)


御園総帥の父と、その父に溺愛される母を持つ。


特徴は、ド不器用。


双子の兄がいて、私は二番目。


下には、五人の弟妹がいる。


私が持っているのは、両親から兄弟全員に与えられた、自分専用の扇。


生まれつき、不思議な力を持つ私たち一家のものたちは、これを媒介として、力を使うのだ。


その力を使うのには、強い精神力がいる。


だから、それも含めて、私は練習に励む。


そんな私の、一心不乱に舞い続ける生活は、私が5歳からだ。


御園の人間としての教育が始まる、3歳の頃。


見せて貰った伯母の舞いに魅せられ、私はこれをしてみたいと望んだ。


望んで始めて、今年で10年。


私は15歳となり、仕事も行っている。


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