☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



「ところで……本当の用件はなんですか?」


「え?」


「茅耶の婚約どーたらは、建前でしょう?あ、茅耶にお見合いをさせるくらいなら、俺が茅耶を貰います」


この人たちは、こんなことのために人を呼びつけない。


こんなことだったら、電話で済ませるような人だ。


例えそれが、娘の婚約話しても。


「……お前、なかなかの洞察力を持ってるな。ついでに、神経も意外と図太い」


「あなた方とは、長年の付き合いですからね。大体、察します。それに、図太く生きた方がいいんでしょう?」


遠慮ばかりしていた幼い俺の手を引いて、


『もーちょい、図太くなれ。神経が疲れるぞ』


と、言ったのは、紛れもないこの人だ。


「フフッ、そうよ。図太いぐらいが良いの」


「んなこといって、お前自身が図太いだろうが」


「あら、なんて?」


「……何でもない」


……相馬さまは、愛妻家兼恐妻家だ。


本当、沙耶さんは強い。


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