☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



「圭吾が二人目だったよ。俺の人生で、俺をまともに見てくれた一般人は」


「……」


「有名なことだし、さっき、自己紹介をしたから、知っていると思うけど……俺は御園家総帥、御園相馬の次男だ。生まれてきたとき、その肩書を、俺はすでに持っていた」


何も持っていないことは、幸せなこと。


そんなことを言ったら、『恵まれているくせに!我が儘!』とか、言われるだろう。


でも、本当にそう思うんだ。


だって、何もない、何もできないということは、これから、何にでもなれる可能性を秘めているということだから。


すべてが完璧になった瞬間、人間はなんのために生きているのか、判らなくなるもので。


「俺さ、学校でみたいに同級生と馬鹿話して、笑い合ってみたかったんだ。“御園冬哉”じゃできないことを、“冬哉”として、やってみたかった」


俺の話を、母さん、柊真、三人……みんな、静かに聞いてくれていた。


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