☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



そんな母さんの体が不自由になったのは、俺よりも四年早くまれてきた一番上の兄の悠哉兄さんと、一番上の茅耶姉さんを生んでからである。


深い理由は知らないが、その時、心肺停止になってしまった母さんは、暫くの間、生死の境を彷徨い、仮死状態となった。


それの後遺症か、左半身が鈍くなってしまった。


けれど、決して、全く動かせないわけではない。


目覚めたときは全くだったらしいが、リハビリを重ね、ある程度、回復はしている。


体のせいで走れなくなっても、結婚のせいで自由が効かなくなっても、母さんは全てを笑い飛ばす。


どんなことを言われても、気にしないし、泣かない。


常に背筋を伸ばして、凛として、前を、遠くを見つめている。


母さんは基本的に活動型で、一ヶ所にずっといることができない……じっとすることを知らない性分なので、父さんは母さんの自由を奪ったと後悔しているが、母さんからすれば、


『これは、私自身が決めたこと。それに、悠哉と茅耶を生んだことは後悔なんてしていないんだから。今が幸せだし、別に気にしてない。気にするのなら、もっと、私を幸せにしてみせてよ』


らしく。


我が母ながら、強かな人である。


< 364 / 493 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop