☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



「いいけど……大丈夫?」


声を優しくかけると、相変わらず、怪訝な顔で女は、俺を見上げてきた。


「はい、ちょっと、感動しただけなので」


それでも、答える辺りは素直っぽい。


「……どんな話?」


「え?」


ちょっと、気になってしまった。


確か、これと同じ本を読んで妹の美耶も泣いていた気がするから。


俺は話を聞くために、彼女の隣に腰を下ろす。


彼女は不思議そうな顔で俺を見ながらも、慌てたように口を開く。


心が、読みにくい女だ。


もっと、分かりやすくしてくれれば、いいのに。


「えっと、家が隣同士の幼馴染みで、高校生の時、付き合い始めるんですが……」

物語のヒロインの名前は、逢佳(あいか)というらしい。


幼馴染みのヒーローの名前は、恵斗(けいと)。


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