☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



「……君は、“愛”が怖いの?」


恐らく、その行動は、俺が御園の人間だから。


(勘違い……この女も……)


やはり、“俺”のことは見ていないのか。


俺の質問に女は悲しそうな目で、返してくる。


「怖い、ですね。母は、それに壊されましたから」


(……母?)


この女のことに関しても、諦めかけたそのとき。


女の言葉が、引っ掛かった。


この女は、母親を、喪っているのか……?


“愛”のせいで……?


なら、どうして、恋愛小説なんて読むんだろう。


“愛”が語られる、本なのに。


女は一拍を置くと、


「でも、貫かれる“愛”は、素敵だと思います」


と、真っ直ぐに俺を見て、言ってきた。


“正妻の逆鱗に触れるべからず”


その言葉で知られる母さんも、それを愛す父さんも、なにも望んでいないのに。


いつも、理不尽な目に遭っている。


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