☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



「真耶、顔、あげろ」


「……嫌」


泣き顔は、見られたくありません。


弱い女だと、思われたくないから。


「真耶、」


大切にしてくれているのは、分かってる。


自分でも面倒くさい性格をしていることは、わかる。


キスをされても、期待してはいけない。


それくらいで期待できるのなら、悲しくなんてならないでしょうから。


それでも、それでも、好きだから。


諦めたく、ないんです。


「ったく……真耶!」


矛盾した考えに、自己嫌悪に陥っていると、再び、顔をあげさせられました。


両頬を、包まれて。


そのときの衝撃で、涙が頬を伝います。


「あ、あれ……?」


私は、自分で戸惑いました。


久し振りなんです。


泣くのなんて。


「……」


夏渡は何かを言いそうになり、言い止まる。


こんな顔をさせたくないから、泣きたくないんです。


“私”に泣かれれば、彼は優しいから、何も言えなくなるんです。



< 447 / 493 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop