☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



「ごめっ……」


拭おうとしても、溢れ出ます。


いつもは、すぐに止まるのに。


「なんで……っ」


「……」


拭っても、拭っても、止まらない。


「っっ、ごめん、ちょっと、待ってて」


私は、夏渡から離れようとした。


けれど。


「……もう、拭うな」


夏渡は私の手首を掴み、私を抱き締めた。


「な、夏渡……」


「あんまり擦ると、綺麗な肌が傷つくぞ」


そして、片手を私の腰に回したまま、反対の手で優しく、私の涙を拭ってくれた。


「そんなの、どうでもいい!だから、離して……」


「嫌だ」


惨めな気持ちに、なりたくなかった。


なのに、夏渡は離してくれなくて。


「……今日、なんで来たの?」


私は大人しく、涙を拭って貰い、用件を尋ねる。


「お前、今日、誕生日だろが」


すると、あっさりと返ってきて。


「……あ」


そうでした。


私の、19歳の誕生日です。


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