☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3
「悪い」
キスとは、こんなものをいうんだろう。
私は彼に抱きつく。
「……夏渡、私のこと、好き?」
いつ聞いても、返ってこなかった返事。
夏渡の息を呑む音が聞こえる。
辛抱強く、その時を待つ。
「……好きだよ」
返ってきたのは、私がずっと欲しかったもの。
「私もね、好きだよ」
幼い頃から、何度も繰り返してきた言葉。
「だから……」
約束を果たしたい。
けれど、私の言葉を遮るように、彼は私の唇に人差し指を当てた。
「そういうことは、男が言わなきゃ」
「……」
夏渡は、微笑んだ。
そして、言う。
「俺と結婚してください」
私の、ずっと、欲しかった言葉を。
私は答える代わりに腕に力を込めた。
自分でも驚くほどに、心臓の音がヤバイ。
「……な?恥ずかしいだろ?」
私が抱きついたことを返事と受け取ってくれた夏渡は、私の背中を撫でながら、笑った。
私は苦笑して。
「ほんとね」
世界で一番大好きな、私の唯一欲しいものをくれる人の肩に顔を埋めた。
終