俺だけのLovelyメイド
少しだけ間が開いて、お母さんは顔を上げた。



「蘭は、泰臣くんのこと、好き?」



「……好き」



「じゃあ、手を放しちゃダメよ」




全て、わかってるんだ。

あたしが、東條のことを想ってだとしても手を放そうとしたことを。




「自分から動かなきゃ。

本当に欲しいものは、自分から動かなきゃ手に入らないのよ」



そう言ってあたしの頭を撫でたお母さんの手。

すごく優しくて、だけどすごく心強い。





「……あたし……もう、行くね」



頬を伝う涙を拭い、あたしは顔を上げた。

お母さんは困ったような表情を浮かべて笑っている。



あたしは──やっぱり、諦めきれない。

だってやっぱり好きなんだもん。

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